累風庵閑日録

本と日常の徒然

『わが名はタフガイ』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●週末を利用して、広島と兵庫とに行ってきた。初日土曜日は広島県の、去年復活延伸した鉄道路線の突端まで行ってきた。この街に特に用事はないので、十分待って乗ってきた電車で引き返す。広島の街に戻って、ブックオフを含め古本屋を三軒回るが、何も買う本は無し。

 二日目日曜日は、兵庫県に移動して須磨浦山上遊園に行く。ここで、世界で唯一という珍奇な乗り物「カーレーター」に乗るのが、二番目の目的である。籠ともベンチともつかない代物が、ベルトコンベアーで運ばれている。宿泊地の姫路に戻り、ブックオフともう一軒古本屋を覗くが、何も買う本は無し。

 三日目月曜日は、姫路城の見学。さすがの国宝さすがの規模で、見学路が長くぐるぐる廻って楽しい。これで現存十二天守全てを訪れて、私の城巡りは完結した。正直なところ城には特に強い興味はない。全国に十二カ所しかないんだったら全部行ったろやんけ、という程度のゲーム感覚で、現存天守を巡っていたのだ。

●旅のお供に持ってきていた、『わが名はタフガイ』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 を読了。

「名作で読む推理小説史」の第四巻、ハードボイルド傑作選である。収録作中で飛び抜けていたのが、仁木悦子「美しの五月」であった。何気ない台詞に伏線を仕込む手法が秀逸。逢坂剛「非常線」は捻りの連続を、小鷹信光「ロス・カボスで天使とデート」はいかにも私立探偵小説らしい典型的な展開を、それぞれ楽しく読んだ。

 こういうテーマ別アンソロジーを読むと、自分の好みを改めて認識できる。情念や感傷といった叙情味や、いわゆるノワールの味わいは、どうもピンとこない。本書ではそのような方向性の作品が多く、読んでいる間は気分が割と低調であった。好みに合っているのは、伏線の妙であり、謎・調査・解決というミステリの典型パターンであり、捻りや切れ味である。上の段落で挙げた三作品は、これら私にとっての美点を備えている。