累風庵閑日録

本と日常の徒然

蓮池浄土

●雑誌『小説幻冬 6月号』に掲載された小松亜由美「蓮池浄土」を読んだ。このシリーズは、散りばめられた伏線が楽しみである。今回の(伏字)という伏線も、意味が分かった時のそういうことね、という面白さはなかなかのものであった。また、ある状況が伏線であると同時にレッド・ヘリングの役割も果たしていることに感心した。これ以上具体的な感想を書こうとすると伏字ばかりになってしまうので、続きは非公開で自分用の記録として書いておく。

●演劇博物館訪問に向けての予習をする。読む予定のシナリオの、原作人形佐七を読んでおこうと思う。とりあえず今日は一編だけ読む。

「通り魔」
 六部姿の怪漢が屋敷に忍び込み、煙のように消え失せる事件が立て続けに起きた。四度目の出現場所はなんと南町奉行の役宅で、奉行は金鎚で殴られ、若党が殺された。道具立ての派手な物語である。真相もなかなか凝っているし、犯人その他の意外性もきちんと盛り込んである。ロジックの面白さもちょいとある。基本設定がいくらなんでも無理だろうというのに目をつぶれば、なかなかよくできた娯楽作品であった。