●『戦前探偵小説四人衆』 論創社 読了。
一冊にまとめるには作品量が足りない作家を四人集めて、一冊に仕立てたという好企画。その四人とは、羽志主水、水上呂理、星田三平、米田三星である。
最も気に入ったのが、今まで「監獄部屋」しか知らなかった羽志主水であった。ソーンダイク博士の味を上手く換骨奪胎している「蠅の肢」も、シンプルな真相とスマートな結末の「越後獅子」も、どちらも私の好み直撃であった。素晴らしい。「越後獅子」は実際のところかなり大きなズッコケがあるようだが、作者のやりたかった意図は十分伝わって、満足である。
水上呂理は、「蹠の衝動」、「犬の芸当」、「麻痺性痴呆患者の犯罪工作」の、二転三転するストーリー展開に感心する。
星田三平は軽快な読み味が気に入ったが、そのなかでもトリッキーな「探偵殺害事件」がベスト。米田三星は、ねちこい文体が好みではない。「蜘蛛」の展開は面白かったけれども。
●これで、論創ミステリ叢書を第五十巻まで読み終えたことになる。今のペースで読み進めると、新刊に追いつくのはあと数年先になる。気の長い話である。