累風庵閑日録

本と日常の徒然

『探偵小説五十年』 横溝正史 講談社

●『探偵小説五十年』 横溝正史 講談社 読了。

 ちゃんと読んでない気がしたので、読んだ。「途切れ途切れの記」正・続編が面白い。読みながら数々の「たられば」を想像していた。乱歩との相性がもう少し悪く、「トモカクスグコイ」の電報がなければ、正史は投稿好きの薬屋の親父として生涯を終えていたかもしれない。「不知火捕物双紙」を持て余し気味だった正史に、乾信一郎と吉沢四郎とが前向きな手紙をよこさなければ、人形佐七は生まれなかったかもしれない。

 今私がこうやって横溝作品を楽しんでいられるのも、そんな数々の分かれ道を経てたどり着いた結果なのである。読み手の私の方も、昔の横溝ブームに流されてハマッていなければ、今の楽しみはなかったであろう。早いものであの頃からは四十年近く経ってしまった。