累風庵閑日録

本と日常の徒然

『こちら殺人課!』 ホック 講談社文庫

●『こちら殺人課!』 ホック 講談社文庫 読了。

 エドワード・D・ホックのシリーズキャラクター、レオポルド警部もののアンソロジーである。気に入った作品は以下のようなところ。この記述が伏線だったのか!という意外性の「港の死」、しがないギャンブラーが転落してゆく様を非情に描く犯罪小説と、短編に使うには惜しいほどの堂々たる犯人絞り込みのロジックが同居する密度の高い雄編「フリーチ事件」、チェスタトンめいた動機の意外性が映える「錆びた薔薇」、書かれているはずのことが書かれていないのが伏線になる「殺人パレード」、冒頭の不可能興味が魅力的な「幽霊殺人」と「不可能犯罪」。

 佳作秀作が多い良短編集であった。このシリーズはもっと読みたい。創元推理文庫あたりで「全仕事」を出してくれないものか。