累風庵閑日録

本と日常の徒然

『パノラマ島綺譚』 江戸川乱歩 光文社文庫

●『パノラマ島綺譚』 江戸川乱歩 光文社文庫 読了。

 全集の第二巻である。乱歩作品は一通り読んだつもりだったが、どうやら「闇に蠢く」と「空気男」とは読んだことがないような気がしてきたので買ってみた。十月から細切れに読んでいて、今月になってようやく読み終えた。

「闇に蠢く」
 わざわざこの本を買って読んでよかった。強烈な題材とやけに古典的な題材とが同居して、なかなか読ませる。失踪事件の謎に取り組む物語が、途中から別の主題に変わってしまうのも乱歩らしい。

「湖畔亭事件」
 乱歩の中・長編のなかで最も好きな作品である。まず、冒頭で心を掴まれる。温泉旅館に何日も滞在するなんて、憧れのシチュエーションにぐっとくる。そして、乱歩の割には構成がしっかりしているのが読みどころ。結末の落とし方も悪くない。

「空気男」
 未完だし短編の分量しかないしで特に書くこともないのだが、まあなんとも乱歩らしいとは思う。

一寸法師
 いつだったか記憶が定かではない数十年前に読んで、内容はもちろん忘れている。怪人一寸法師が暴れまわる活劇スリラーをイメージしていたら、案外しっかりした構成ではないか。手掛かりや容疑者をあれこれ検討するようなシーンもあるし、事件の全体像は複雑だし、ちょっとした捻りも盛り込まれてある。期待値低めで読み始めたおかげで、予想以上にミステリの面白さを味わえた。

●先週の木曜日、注文の本が届いていた。情報がオープンになるまではSNS等で言及しないという要請にしたがって非公開だったのを、今日の日記に書いておく。
『怒れる老婦人たち』 L・ブルース ROM叢書
『レイヴンズ・スカー山の死』 A・ハーディング ROM叢書