累風庵閑日録

本と日常の徒然

『幽霊通信』 都筑道夫 本の雑誌社

●『幽霊通信』 都筑道夫 本の雑誌社 読了。

 少年小説コレクションの第一巻である。今年からこのシリーズを読んでゆく。「ゆうれい通信」は、十二編で構成される短編集。それぞれが十ページにも満たない小品だし子供向けだしで驚くほどの読み応えはないが、面白いものもあった。

 いくつか例を挙げると「三時三分にどうぞ」は、事件が終結してからなおも続く、書かれていない陰惨な物語が想像される。「スペードの4」は、ホームズの某作品の変奏のようだ。「五色のくも」は、事件の描写がなかなかにグロテスク。個人的ベストは、「七福神の足あと」であった。ロジカルな味が最も強く出ているし、(伏字)するネタが盛り込まれているのも嬉しい。

「耳のある家」と「砂男」は、怪奇色の強い長編スリラー。不気味な出来事が次々と起きる派手な展開で、当時のお子様達は夢中になったのではなかろうか。いい歳のおっさんが読むと特にどうということもないのだが。

●注文していた本が届いた。
『不浄な死』 R・T・キャンベル 綺想社
 巻末の文章を読むと、なかなかに香ばしい。いわく、訳の正確さは優先させない、訳文の統一はしない、訳文のゆるいところは受け入れろ、それを理解しないやつは買うな。いやはやどうにも、なんともかんとも、香ばしいではないか。今後の綺想社の出版活動に、いろいろな意味で期待大である。