●『笑ってジグソー、殺してパズル』 平石貴樹 集英社 読了。
冒頭に読者への挑戦が挿入されている。全四章のうち第三章の終わりまでで必要なデータが出揃うという。こうなると自ずと期待値も高まろうというものだ。で、読了後の結論としては、納得はするが満足度は高くない。犯人に到達する道筋の出発点に立つのに(伏字)が必要である。時々出くわすこういったタイプのミステリは、そんなの分かるわけないだろうと思ってしまう。まあ負け惜しみなのであるが。
以下、気に入った点。早い段階で言及されているように、まさしくジグソーパズル殺人事件である。特に、現場にばらまかれていたジグソーパズルの意味については、こういうのだよ読みたいのは、と思う。事件全体を検討するロジックは隅々まで神経が行き届いていて、前段落の点を除けば概ね満足である。探偵役が事件解明に取り組むときに動機は考えないという。にもかかわらず、動機に関する伏線ですら数多く仕込まれている点は好ましい。
何人か、妙に突き抜けた個性の持ち主が登場する。東北訛りで喋るサクマ刑事、要領が悪くて上司を苛立たせるモリシタ巡査、英語を勉強しているのがご自慢で会話中にむやみに英語を挟み込むサカキ家政婦、といった面々が、けっして主要登場人物ではないのに異様なまでに存在感を発揮して愉快である。
●注文していた本が届いた。
『ソーラー・ポンズの冒険』 A・ダーレス 綺想社