累風庵閑日録

本と日常の徒然

『幻の女』 W・アイリッシュ ハヤカワ文庫

●『幻の女』 W・アイリッシュ ハヤカワ文庫 読了。

 必要があって、数十年ぶりの再読。初読のときはあまりの面白さに夢中になってページをめくったものだ。今回はぼんやり真相を覚えているので、割と冷静に読んだ。サスペンスと叙情性とが身上のこの作品であるが、今回最も面白かったのは(伏字)の殺人に関する趣向であった。自分の心覚えのために、詳しいことは非公開で記しておく。

(以下、段落ひとつ非公開)
 全体は、漠然とした記憶にあるよりもきっちり構成されていたのが意外であった。なかでも、ある種の人間関係から導かれる意外性には感心した。作品の眼目のひとつと思っていた幻の女の正体は、これまた漠然と記憶に残っていたがなんとまあこういうオチだったとは。感心はしないががっかりもしない。感情ではなく理屈で受け止めた。ふむふむアイリッシュ、こういう扱いにしたのだな、という。ニュアンスが伝わるかどうか覚束ないけれども。

●『幻の女』を題材にした同人誌向け原稿を、今月中に仕上げなければならない。

●書店に寄って本を買う。
『別冊太陽 探偵小説の鬼 横溝正史』 平凡社
『幽霊のはなし』 R・カーク 彩流社