累風庵閑日録

本と日常の徒然

『一角獣・多角獣』 T・スタージョン 早川書房

●『一角獣・多角獣』 T・スタージョン 早川書房 読了。

 新装版異色作家短編集の第三巻である。「孤独の円盤」の、円盤の由来についてのアイデアには感心した。「考え方」の、描かれていない背景の物語を想像すると凄まじいものがある。他に気に入った作品をコメントなしで挙げると、「熊人形」、「ビアンカの手」、「ふわふわちゃん」、「監房ともだち」ってなところ。

 収録作のベストは「死ね、名演奏家、死ね」であった。作中で扱われる、才能を持った者に対する凡人の嫉妬には身につまされるものがある。もうひとつ、この作品で扱われる重要なテーマがある。表現者は、その表現を愛する者がいる限り永遠に死なないのだ。