累風庵閑日録

本と日常の徒然

ウエルシーニン「大破滅」

●昭和五年に刊行された春陽堂の探偵小説全集第十九巻から、ウエルシーニン「大破滅」を読んだ。

 舞台はサンクトペテルブルグ。作中では「ペチエルブルグ」と表記されている。銀行の現金輸送馬車が襲撃され、駅で爆弾が爆発し、要塞の司令官が暗殺される。相次ぐ事件の背後にいるのは、どうやら反政府革命党らしい。やがて秘密探偵局の捜査により、革命党による参謀本部への大規模な襲撃計画が浮上してきた。

 陰謀に、罠に、裏切りに、ちょっとしたアクション。暗躍する謎の東洋人。自らの使命にふと疑問を持ってしまった、ある探偵局員の苦悩。スパイ小説のなかなかの佳品であった。突出した特徴に乏しい型通りの展開だが、典型好きの私としては、その辺がむしろ好ましい。ところで、作者についても書誌的な点に関してもなんら情報がなく、よく分からないのだが。

 この本はここでいったん休止し、同時収録のフレッチャー「ライチェスタ事件」を読むのは後日のことにする。明日からは別の本を読む。つまみ食い三冊目である。

●今月の総括。
買った本:七冊
読んだ本:十冊
二冊もつまみ食いを抱えてしまったので、十一冊目を読むには至らなかった。