累風庵閑日録

本と日常の徒然

『雷鳴の中でも』 J・D・カー ハヤカワ文庫

●『雷鳴の中でも』 J・D・カー ハヤカワ文庫 読了。

 真相が思いの外地味で、ちと拍子抜け。だが、後期のカーはそんなもんだろうと思い直す。そして、相変わらずのカーらしさが健在。カーらしさとはすなわち、やたらと寸断される会話や、曖昧な仄めかしに終始する会話、そんなの気付くわけないだろ、という些細すぎる手掛かりなど。誰かが誰かに言った言葉のホンの切れ端が、重要な意味を持っていたりする。結末で指摘された手掛かりを確認しようとして、ページを遡っても結局見付けられないというのはありがち。

 ところで、硫酸の件は結局意味が理解できなかったのだが。それをやってどうなる?