累風庵閑日録

本と日常の徒然

『クイーンの色紙』 鮎川哲也 光文社文庫

●『クイーンの色紙』 鮎川哲也 光文社文庫 読了。

 三番館シリーズの五冊目である。「秋色軽井沢」はメインのワンアイデアも悪くはないが、人間の心理を読んだサブのネタが気に入った。以降の作品の読みどころを挙げておくと、「X・X」では、ダイイング・メッセージに対するアプローチの捻り方。表題作「クイーンの色紙」では、シンプルな真相に通じるシンプルな伏線。「タウン・ドレスは赤い色」では、(伏字)を構成するための、これもシンプルなネタ。「鎌倉ミステリーガイド」では、記述の工夫。それぞれの収録作にそれぞれ読みどころのある上出来な短編集であった。