累風庵閑日録

本と日常の徒然

『悪魔の玉手箱』 斎藤栄 ソノラマ文庫

●『悪魔の玉手箱』 斎藤栄 ソノラマ文庫 読了。

 読者への挑戦シリーズ、という副題が付いている。冒頭には、「著者が読者のみなさんに挑戦する、四つのパズルが含まれています」とある。これがもう、なんとも他愛ない。挑戦の内容が、文字通りパズルなのである。たとえば、猿の絵と切られたお札と蛇の死骸とが示す意味を解釈せよ。あるいは、観覧車の絵に隠された文字を発見せよ。ってなもんで。それらがストーリーと密接に結びついているのならまだいいが、どうも必然性に乏しい。

 全体に説明不足や矛盾点が散見され、練り込みの足りなさを感じてしまう。この本って、「挑戦シリーズ」という企画ありきで、あまり時間をかけずに書かれたのではなかろうか。

 メインの事件は営利誘拐で、身代金奪取の手段と犯人の設定はちょっと面白かった。まあジュブナイルだからこんなもんだろう、というのが結論。ついでに、これが初めて読む斎藤栄であった。たった一冊で作家を判断するのは危険だが、他の著作を読みたい気にならなかったのが正直なところである。