●『タワーの下の子どもたち』 仁木悦子・大井三重子 論創社 読了。
仁木悦子少年小説コレクションの第三巻である。今回は大半が童話なので、読んで面白いかどうかとは別次元の本である。単行本未収録どころか未発表の作品まで収録されていて、そもそも読めるということに大きな意義がある。こうやって本の形にして刊行されたら、内容に刺さる読者は必ずいるはずだ。
表題作の中編は連載された新聞が公共図書館になく、遺族が所持していた新聞切り抜きのスクラップブックから収録したという。これもまた大変なことだ。内容は、まあジュブナイルだからこんな感じの展開だろうとの予想が外れて、意外に起伏があって先が読めない。これはいい。