累風庵閑日録

本と日常の徒然

『犯罪コーポレーションの冒険』 E・クイーン 論創社

●『犯罪コーポレーションの冒険』 E・クイーン 論創社 読了。

 ラジオドラマシナリオ集の第三弾である。どれも読ませる快作揃いだが、特に気に入ったのは以下の作品。丁寧に伏線が散りばめられている「暗闇の弾丸の冒険」、シンプルで決定的な手掛かりの「カインの一族の冒険」、いかにもクイーンらしい「奇妙な泥棒の冒険」と「見えない手がかりの冒険」、真相の面白さは個人的にこれがベストの「放火魔の冒険」。

 巻末解説は、読み所をきちんと提示してくれるのが嬉しい。これぞまさしく「解説」である。また、クイーンの他の作品との関連をちょいちょい指摘してあるのは、マニアさんにとっては興味深いポイントだろう。私はただのファンでしかなく、読んだ作品の内容はほとんど忘れているから、直接的にはその面白さを共感できないけれども。読者の反響次第では第四弾の可能性もあるというから、期待したい。

●一昨年のこと、『ミステリマガジン』や『EQ』に訳載されたままになっているクイーンのラジオドラマシナリオを、まとめてコピーしたことがある。だがテキストを入手して安心して、以来放置していた。今回その中のいくつかが本に収録されたのは、読むのにいいきっかけであった。

コピーした作品のうち、今回未収録だったのは以下の五編である。いつか読む。
「案山子と雪だるまの冒険」
「幽霊洞窟の冒険」
「ネズミの血の冒険」
「怯えたスターの冒険」
「沈んだ軍艦の事件」