累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ずれた銃声』 D・M・ディズニー 論創社

●『ずれた銃声』 D・M・ディズニー 論創社 読了。

 平凡な老婦人が射殺された。動機は見当たらず、めぼしい容疑者も、凶器の銃も、銃弾さえも見つからない。捜査が膠着する中、次第にある一族の数十年に渡る物語が見えてくる。

 どうやらこの作家、外連味や意外性やロジックの興味で勝負するタイプではなさそうだ。登場人物の造形が秀逸だが、とりわけ犯人と、関係者のうち数人とが印象深い。

 そしてもうひとり造形が秀逸なのが、主人公のオニール刑事で。妻と娘を愛するオニールだが、中盤である出来事が起きてからは、よりいっそう家族とのつきあいが濃密になる。ときには彼女達に振り回されてつい苛立つことも。ホーム・コメディめいた描写から、良き家庭人たらんと心がけるオニールの人物像が浮かび上がってくる。

 ところで、冒頭に掲げられた家系図は間違っているようだ。

●お願いしていた同人誌が届いた。
『Re-ClaM Vol.2』
 特集は「十五年目の論創海外ミステリ」である。読むのが楽しみ。