累風庵閑日録

本と日常の徒然

『姿三四郎』 富田常雄 新潮文庫

●『姿三四郎』 富田常雄 新潮文庫 読了。

 日本伝紘道館柔道の創始者矢野正五郎の活躍をいわば前史編として描き、本編に至って彼の弟子で柔道の天才姿三四郎の成長と闘いとをつづる大長編。これがもう、はちゃめちゃに面白い。

 ベタな展開をどんどん盛り込んでとにかく分かりやすく、頭に引っかかることなくすいすい読める。バラエティに富む相手と闘う場面はすっかり格闘アクション小説で、これもとにかく面白い。その相手は、柔術、剣術、相撲、唐手、ボクシング、レスリングなどなど。

 三四郎は大衆小説のヒーローらしく、とにかく清廉でとにかくモテる。その造形はあまりにも理想的で、この歳で読むとちょいちょい冷静になるほど。本当なら気力体力集中力が今より充実していて気持ちも若い二十年前か三十年前に読むべき本であった。

 面白いことは無類に面白いし、おかげでぐいぐい読めたけれども、今の私にとってはちと長すぎて満腹気味であったのもまた事実。

●この日記をご覧いただいている諸賢には心底どうでもいい話であろうが、『姿三四郎』は上中下の三巻本なので、現時点での今月の読了数は三冊とする。