累風庵閑日録

本と日常の徒然

『犯罪カレンダー』 E・クイーン ポケミス

●『犯罪カレンダー』 E・クイーン ポケミス 読了。

<1月~6月>と<7月~12月>の二分冊構成になっているのを二冊合わせて通読した。ご覧の諸賢にとってはまったくどうでもいいことだと思うが、これで二冊読了ということにする。収録作の多くが、設定はクイズめいて単純だし真相もクイズか言葉遊びかという軽い味わいである。この作品集はラジオドラマのシナリオを小説に仕立てたものだそうで。どうりで、と思う。

<1月~6月>に収録の作品では「ゲティスバーグのラッパ」がベスト。単純なものではあるがロジックで解決に導いている点が気に入った。次点は「くすり指の秘密」で、これもロジックで解決する好編ではあるが真相のカタルシスがやや欠ける。

 後半の<7月~12月>になると、割としっかりしたミステリになってきた。「墜落した天使」は全体の骨格が陳腐と言っていいメロドラマで、真相もよくあるネタだが、よくあるネタだからこそ読んで楽しい。「針の眼」は、真相の切れ味がお見事。「ものをいう壜」と「クリスマスと人形」とは、ちょっとしたアイデアの小ネタがいい感じ。