累風庵閑日録

本と日常の徒然

『怪盗ニック全仕事4』 E・D・ホック 創元推理文庫

●『怪盗ニック全仕事4』 E・D・ホック 創元推理文庫 読了。

 準レギュラーの新キャラクターが登場したり、恋人グロリアとの関係が変化したりといった、シリーズ全体の大きな動きが味わえるのも「全仕事」の魅力である。第三巻のときにも書いたけれども、東京創元社さんはいい仕事をしてくれたと思う。

 ライヴァルでもあり時には共同作業をする怪盗サンドラ・パリスが登場する回は、不可能興味を前面に出してぐっとくる。「白の女王のメニューを盗め」、「図書館の本を盗め」、「色褪せた国旗を盗め」と、どれも謎の設定が魅力的。

 収録作中のベストは「人気作家の消しゴムを盗め」で、伏線もありロジックの面白さもあり切れ味のいい小細工もありの秀作であった。

 他に気に入ったのは、背景となる物語のスケールが大きい「売れない原稿を盗め」、伏線の妙とロジックとを楽しめる「使い古された撚り糸を盗め」、オチが秀逸な「紙細工の城を盗め」と「空っぽの鳥籠を盗め」、伏線がお見事な「社長のバースデイ・ケーキを盗め」といったところ。