●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第二十三回として、第五巻から長編「霧の世界」を読んだ。訳者は横溝正史である。実際はただの名義貸しらしいが。
いやはや、これはしんどかった。内容を一言で表すなら、交霊術は本物だった!
作者の力点が思想や主張の表明に置かれてしまうと、物語の面白さを構築する部分がどうもおろそかになるようだ。展開は平板で、A会場の交霊会の模様、次にB会場の交霊会の模様、次にC会場の交霊会の模様、とだらだら続く。その中身も平板で、まずは一人目の霊魂が現れてなんか喋る、次に二人目の霊魂が表れてなんか喋る、次に……ってな調子で。もしかして最初は雑誌連載だったのだろうか。短いエピソードのつなぎ合わせに思えるのだが。
そもそもが私の興味の範囲から遠く遠く離れている題材なうえに、こんな起伏の乏しい内容なものだから、全然集中できない。ページをめくる手がすぐに止まってしまう。二百六十ページのこの作品を読むのに三日もかかってしまった。久しぶりに、まだあとこんなにあるのかと残りページを数えながら読む作品に出くわした。
●書店に寄って本を買う。
『辮髪のシャーロック・ホームズ』 莫理斯 文藝春秋
●注文していた本が届いた。
『柬埔寨の月』 ヒラヤマ探偵文庫
作者不詳の、セクストン・ブレイク譚である。