●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第二十八回。今回からジェラールシリーズの続編、「ジエラール旅團長の冒險録」を読み始める。ただ、どうも気分が乗らず、半分の四編だけを読んで打ち止めとする。残りの四編は来月読む。
ジェラールは、回顧談の合間に頻繁に自慢を挟み込む。いわく、俺様の剣の腕前は無双。俺様の乗馬の腕前は無双。俺様の胆の据わり方は無双。俺様の勇名はフランス中に轟いている。俺様の死は国家の損失である。俺様は優秀。俺様は素晴らしい。俺様はモテる。こういった極端な性格設定は、笑うところなのだろうか。ドイルの意図がいまひとつ分からない。あまりにもくどい造形に辟易したのも、一気に通読できなかった一因である。
四編の中では「旅團長、キングを掌中にした話」が面白かった。怪我をして戦線を離脱していたジェラール。概ね傷が癒えたことから、山向こうの自軍に合流するつもりで出発した。ところが山中で山賊に捕まり、殺される寸前に。絶体絶命の危難を持ち前の機転と度胸とで逃れるエピソードが語られるかと思いきや、ストーリーは急角度に進行方向を変えてしまう。その意外さにあれれと思う。