●『シャーロック・ホームズ アンダーショーの冒険』 D・マーカム編 原書房 読了。
四巻から成る大部のホームズパスティシュアンソロジーから精選した作品集だそうで。編者デイヴィッド・マーカムの手になる「質屋の娘の冒険」は、いかにもパスティシュらしいパスティシュで好感が持てる。その書きっぷりはホームズシリーズに詳しい者が、どうしても抑えることができずについ数多の小ネタを盛り込んでしまったような。溢れんばかりのホームズ愛が、ドイルが書きそうにない書き方にさせてしまう。その辺りの機微が微笑ましい。
デニス・O・スミス「沼地の宿屋の冒険」は、冒頭の謎が奇妙で魅力的。マシュー・ブース「死を招く詩」はきちんと伏線が張ってあって、ミステリ色が濃いのが好み。ビル・クライダー「無政府主義者の爆弾」は、正典にちょいちょい矛盾があることを上手く取り込んでアイデア賞もの。
リンジー・フェイ「柳細工のかご」は事件そのものは(伏字)なんざ使ってどうもいただけないが、作中で描かれるホームズとワトスンとレストレード警部との関係性にぐっとくる。ジェイムズ・ラヴグローヴ「植物学者の手袋」は伏線やなんか事件の経緯が整っているし、蜜蜂の扱い方がちょいと気が利いている。