累風庵閑日録

本と日常の徒然

『七之助捕物帖 第二巻』 納言恭平 捕物出版

●『七之助捕物帖 第二巻』 納言恭平 捕物出版 読了。

 三百ページほどの本に二十一編も収録されている。二十ページに満たない作品ばかりなので、伏線を散りばめてロジックで真相に至る構成にするには分量が足りない。かといって捻りと切れ味とで勝負する作風でもない。結末で七之助が推理を開陳するでもなく、キーパーソンを問い詰めたらあっさりと、何もかもべらべら喋って解決、というのがお決まりのパターンである。時折漂うミステリ風味を頼りに、終始平熱で読み進めた。それでもなかなか先を読みたい気分が盛り上がらず、読了までに四日もかかってしまった。

 時折漂うミステリ風味がどんなものか、作品名を出さすに順不同で列挙しておく。犯人の策略によって自分から罠にかかる被害者、右手と左手、人間入れ替わり、特殊な凶器、死体の隠し場所、濡れていない履物と泥の足跡、出入りできない部屋からの書類紛失、犯罪組織の仕業に見せかけた殺人、盗難品の隠蔽法、密室殺人。こうやって並べると濃厚なミステリ短編集のようだが、実際はそれぞれが実に他愛ない。文字通り風味付け程度である。

 ところが一編だけ、特筆すべきは「家鴨を飼う娘」である。どうやら、ホームズ物の某短編の要素がヒントになっているようだ。翻案というには違いが大きすぎるので、素材のひとつといったところだろう。第一巻でもホームズネタが見受けられたし、こういうのが紛れ込んでいるからこのシリーズは油断がならない。

●書店に寄って本を買う。
『あなたも私も』 久生十蘭 角川文庫
『新シャーロック・ホームズ 顔のない男たち』 T・メジャー 角川文庫
『ミステリマガジン 7月号』 早川書房

●注文していた本が届いた。
『女性軌道』 大下宇陀児 盛林堂ミステリアス文庫