累風庵閑日録

本と日常の徒然

『名探偵登場』 山村正夫編 青樹社

●『名探偵登場』 山村正夫編 青樹社 読了。

 八人のミステリ作家が合議の上一人の名探偵キャラクターを創造し、彼を主人公にした短編ミステリをそれぞれ書くというアンソロジー。真相があまりにも……な作品や、私の嫌いな人情噺臭が漂う作品があって、個人的な好みとしては打率五割といったところ。以下、気に入った作品にコメントを付けておく。

 大谷羊太郎「あざなえる縄」は、メインのネタが陳腐なのは作者自身百も承知だったらしく、捻りを加えることでちょっとした佳品に仕上がっている。桜田忍「人を呪わば穴二つ」は、私立探偵が主人公でシリーズキャラクターは依頼人となる変わり種。ストレートな展開にはあまり感銘を受けなかったが、読み口が他の作品と違っているのが魅力といえなくもない。天藤真「隠すよりなお顕れる」は、犯人の仕掛けた計略の独自性とそれに乗せられる人物の個性を買う。草野唯雄「一寸先は闇」は、マンションの屋上から転落した死体が三階の部屋に忽然と現れるという冒頭の謎が魅力的。真相はずっこけるけれども。