累風庵閑日録

本と日常の徒然

『心地よく秘密めいた場所』 E・クイーン ポケミス

●『心地よく秘密めいた場所』 E・クイーン ポケミス 読了。

 真相も真相に至る筋道も、特に感心するようなものではなかった。けれど、つまらないわけではない。七十年代の作品であるにもかかわらず、釦や足跡、そして左利きなんていう時代がかった手掛かりをあえて持ち出し、終盤ではチェスタトンを引き合いに出す。そうやってクラシックミステリの谺を響かせる趣向は、なかなか楽しい。数字と言葉にこだわっているのがいかにもクイーンらしく、その点も微笑ましい。

 ところで詳しくは書かないけど、斜めと平行、右と左、前向きと後ろ向き、といったキーワードで語られるある状況が、さっぱりイメージできなかった。どうしてそうなるの? 図解で説明してもらいたいくらいだ。

●昨日入手した、横溝正史「まぼろしの怪人」のコピーをぱらぱら眺めていて、あることに気付いた。第三話「まぼろしの少年」のオープニングが、なんと「夜光虫」の流用ではないか。この作品は一度読んだことがあるが、いつ読んだかも覚えていないほど昔のことである。まったく頭に残っていなかった。

 「まぼろしの少年」の後半に出てくる隠し場所ネタも、第一話「社長邸の怪事件」に出てくる映画ロケのネタも、旧作の再利用である。また、別作品「怪盗X・Y・Z」にも、旧作の再利用が見受けられる。もしかして後期ジュブナイルは、調べてみるといろいろな発見がありそうな気がしてきた。

国会図書館に、次なる一連の複写依頼を出した。