累風庵閑日録

本と日常の徒然

『<ネロ・ウルフの事件簿> アーチー・グッドウィン少佐編』 R・スタウト 論創社

●『<ネロ・ウルフの事件簿> アーチー・グッドウィン少佐編』 R・スタウト 論創社 読了。

 ミステリの仕掛けという点では、ちと気持ちが醒める部分がないではない。が、そんなことがどうでもよくなるほど、ストーリーも、キャラクターも、彼ら同士の掛け合いも、抜群に面白い。仕掛けだけを求めて読むシリーズではないのである。それに、処理の仕方に少々引っかかるとはいえ、ネタそのものは十分面白い。

 一番気に入ったのが「死にそこねた死体」である。上で書いたように、事件の根幹が(伏字)するパターンは好みではない。けれど、結末でそれが明らかになるときの、あっという切れ味がお見事。

 こんなに面白いというのは、読んだタイミングもよかったと思う。その昔、まだ幼くて悪い意味で潔癖で、凝り固まった本格ミステリ原理主義者だった頃は、このシリーズの持つ面白さを受け止めることはできなかっただろう。本には、読むのに相応しいタイミングがあるのだ。

 レックス・スタウトの作品はもっと読みたい。手持ちの積ん読を消化するだけでも、まだまだ楽しめるはずである。でもそこから先、古本を探したり、図書館に出向いて雑誌『EQ』から既訳作品をコピーしたりするほどの情熱はないけれども。