累風庵閑日録

本と日常の徒然

『踊るドルイド』 G・ミッチェル 原書房

●『踊るドルイド』 G・ミッチェル 原書房 読了。

 まず、登場人物が実に魅力的。探偵役で奇矯なブラッドリー夫人、秘書のローラ、運転手のジョージ。最初に事件に巻き込まれた青年オハラと、その友人ガスコイン。中盤以降に事件調査の仲間に加わる、ブラッドリー夫人の甥デニス。そういった面々が活き活きと描かれ、活き活きと活躍する。個人的に出色だったのはジョージで、単なる使用人ではなく物語内でしっかりと役割を果たしているし、人となりを示すエピソードも盛り込まれてる。

 ミステリとしては、探偵が最後に長々と真相を解き明かすタイプではなく、調査の進展に伴ってじわじわと事件の全貌が見えてくるタイプ。ブラッドリー夫人を中心とした探偵活動によって、新たな情報がテンポよく提示されてゆく展開は中だるみがない。目撃者Aが見た人物aと目撃者Bが見た人物bとが同一人だった、なんて意外な設定もちょいちょい出てくる。展開の面白さでぐいぐい読み進めることができる佳品であった。