以前にも書いたが、私にとって香山滋は出会うのが遅すぎた作家である。感受性も想像力も今より柔軟だった昔に読んでいれば、ハマったかもしれない。今となっては、似たようなパターンの繰り返しに思えて、通読するのが少々しんどかった。ただ、「エル・ドラドオ」、「心臓花」、「シャト・エル・アラブ」の、あまりにもカッ飛んだストーリーは面白かったけれど。
●さてこれで、怪奇探偵小説名作選全十巻を読了した。前シリーズの怪奇探偵小説傑作選全五巻と合わせた十五冊は、実に画期的な企画であった。好みに合わない作家もいたけれど、それは読んで初めて分かることである。そもそも読めないことには、始まらないのだ。ラインナップにあるような作家の著作が、新刊書店で手軽に買えて手軽に読めるなんて、まったくもって素晴らしい。
……だがそんな状況も今は昔。どうやら現在は全て版元品切れで、「傑作選」の五冊のみ電子書籍になっているようで。