●『忘られぬ死』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。
章立てが秀逸。第一章は、一年前に自殺した姉ローズマリーのことを妹アイリスの視点で回想する。姉は全てを手に入れていた。美貌も、優雅な身のこなしも、財産も、幸せな結婚も。ところが二章以降視点人物が変わると、ローズマリーの人物像ががらりと変わって負の側面が見えてくる。深みが増すどころか、浅さがあからさまになってゆく。
事件の枠組みは早い段階で提示される。レストランの同じテーブルについていた六人の中に犯人がいる。そこで読みどころは、枠組みの中で意外性を演出するのか、それとも結末に至って枠組みそのものをひっくり返して見せるのか。クリスティーのお手並み拝見である。で、結末は、うん、これは素晴らしい。
●書店に出かけて本を買う。
『マーチン・ヒューイット【完全版】』 A・モリスン 作品社
『短編ミステリの二百年5』 小森収編 創元推理文庫
光文社文庫の谷崎潤一郎は棚になかったので、通販で取り寄せを手配した。