老人小説である。最近の若い者はけしからんという視点が、物語全体を取り巻いている。クリスティーはどこまで自覚的に、老人のありふれた愚痴を繰り返し書き込んだのだろうか。
ミステリとしては一風変わった展開で、どこかでなんらかの事件が起きているのかいないのかを探索する物語である。どうもぼんやりしたことで。途中で事件の片鱗と思える要素が見えてきて、いよいよ物語が加速するかと思いきや、なおもとりとめのないままページが進む。
ようやく事件の輪郭が表面に現れた頃には、いくらなんでも「そうじゃない」ことは予想がつく。その辺の意外性は感じなかったけれども、犯人の立ち位置にはちょっとした外連味があって、結論としてはまあ満足である。