累風庵閑日録

本と日常の徒然

「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクト第十四回

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第十四回として、第三巻の続きを読む。今回は「歸つて來たシヤアロツク・ホウムズ」から、前半の七編を読んだ。訳者は上塚貞雄である。「空家の冒險」にて、バリツのことを「柔術即ち日本流のレスリング」と訳してある。

 今更感想でもないので、コメントは少しだけ。「シ・エイ・ミルヴァートン事件」によると、ホームズは暗闇でも眼が見えるという。徐々に会得していった特殊能力だというが、山田風太郎の忍者みたいだ。

「ノーウッドの建築師」は、真相、動機、伏線と、よく整ったミステリ短編の秀作。あまりに整い過ぎて、ホームズ譚らしくないと思うほど。(伏字)のはいくらなんでも無茶だが、そこをツッコむのは野暮であろう。「三人の學生」もシンプルで整った佳作。