累風庵閑日録

本と日常の徒然

『闇の展覧会-霧』 K・マッコーリー編 ハヤカワ文庫

●『闇の展覧会-霧』 K・マッコーリー編 ハヤカワ文庫 読了。

 シリーズ三冊目の本書の目玉は、質量ともにスティーヴン・キングの長編「霧」である。キングって過去に何冊か読んでどうもピンとこなかったのだが、この作品はゴキゲンな恐怖小説であった。題名の通り不気味な霧が街を覆った状況で、ショッピングモールに閉じ込められた人々があれやこれやする物語。

 異常事態に直面して、人々は否応なしに人間臭い弱さや愚かさをさらけ出してゆく。その様子がいかにもありそうに書かれていて、上手い。中だるみしないよう前半からちょいちょい見せ場を設けてあるのも上手い。物干し綱のエピソードなんざ、感心するほど上手い。とにかくもう、めったやたらに面白い。

「霧」でページを取られて他は短編四作しか収録されていない。そのどれもがちょっとした佳作であった。デイヴィス・グラッブ「三六年の最高水位点」は、クライマックスの情景を映像で観たくなる。大規模な特撮が必要だから昔は難しかっただろうが、今ならCGでなんとかなりそうな。

●書店に寄って本を買う。
『烙印』 大下宇陀児 創元推理文庫