累風庵閑日録

本と日常の徒然

『不死鳥と鏡』 A・デイヴィッドスン 論創社

●『不死鳥と鏡』 A・デイヴィッドスン 論創社 読了。

 魔法やモンスターが実在する架空の中世ヨーロッパ世界を舞台に、魔術師ヴァージルの冒険を描く。巻末解説によれば作者が本当に書きたかった作品だそうで。実際の歴史や神話の題材を大量に盛り込んで、その上に独自の世界設定をこれでもかと構築してある。作者が楽しんでいるだろうというのは伝わってくる。

 それはいいのだが、さほど多くない分量の中に設定情報が占める割合が多く、そんな箇所に出くわす度に話が止まる。こういうのは、ストーリーの流れを楽しむとともに語られる世界観もまたゆっくり味わいながら読み進めるべきなのかもしれない。生来のせっかちな性分でどんどん読んでいったから、ちとまどろっこしく感じてしまった。

 無理やりミステリに引き寄せて内容を一言で表すなら失踪人探しの物語であり、裏面に潜む陰謀を暴く物語である。この着地点のおかげで、読了してがっかりはしなかった。

●注文していた本が届いた。
『毒虫』 宮野村子 盛林堂ミステリアス文庫