●『毒の矢』 横溝正史 角川文庫 読了。
今晩十八時から「毒の矢」の朗読ライブが開催されるのに向けて予習しておく。ついでに同時収録の「黒い翼」も再読して、本一冊読んだことにする。
前回読んだのは八年前。光文社文庫から出た『金田一耕助の帰還』に収録されている「毒の矢」原型短編と読み比べたのであった。同時に、作品の変遷をたどるために人形佐七もの「当たり矢」と中絶作「神の矢」との読み比べもやった。その辺りは過去の日記で公開している。
「毒の矢」
ちょっとした快作。気の利いた伏線があって、犯人が仕掛けたトリックがあって、そこに解決に結びつく手がかりがきちんと仕込まれていて。ミステリとしての型が整っている作品は、読んでいて気持ちがいい。事件の決着だけでなく物語の決着もきちんとつけるだけのページの余裕があるのは、改稿長編だからこそであろう。
「黒い翼」
金田一耕助が、殺人事件に取り組むのではなく私立探偵として調査の仕事をしている日常が垣間見える点が興味深い。事件としては、金田一耕助の役割が薄いし犯人の設定が(伏字)のがちと心細いけれども。
●余勢を駆って人形佐七ものの「当たり矢」も再読。順番としてはこちらが先である。捕物ネタを現代もの「毒の矢」に作り変える手際がお見事。