累風庵閑日録

本と日常の徒然

『災厄の紳士』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫

●『災厄の紳士』 D・M・ディヴァイン 創元推理文庫 読了。

 登場人物の造形がしっかりしていて、良くも悪くも個性的。そんな彼らが織り成す日常生活が活き活きと描かれ、ミステリだからサスペンスも孕んで面白く、ぐいぐい読める。たとえば主人公格のサラ・ケイン。父親は世を拗ねて隠遁して、愚痴とわがままばかり。夫は皮肉屋で怠け者で、自分をいらだたせる言葉を言ってくる。妹は悪い男にだまされていたことが分かって神経がぼろぼろ。幼い娘は熱を出す。彼女はそんな家族に振り回されて、心身ともに休まるときがないのであった。

 ミステリとしても嬉しい仕上がりで、(伏せ字)という手がかりはなかなかに絶妙である。犯人を絞り込むために(伏せ字)が使われていることにも感心した。あの描写にはそんな意味があったのか。上質のミステリを読んだ満足感がある。

●注文していた本が届いた。
『T怪人団』 楠田匡介 湘南探偵倶楽部