組織犯罪の全容解明がメインのテーマである。殺人は起きるが、扱いは割と小さい。全体は第一部アマチュア、第二部プロフェッショナルに分かれている。それぞれの主人公は、製材業者の裏の姿に偶然不審を持った一般人メリマンと、ある殺人事件をきっかけに組織犯罪の捜査に取り組むウィリス警部である。この作品はクロフツの第三作で、フレンチ警部はまだ登場しない。
その読み味はいつものクロフツで、いやもうとにかく丹念、緻密、地味、堅実。それに対応するように犯罪計画もまた発覚を防ぐ工夫が縦横に張り巡らされており、特に伝票処理の部分は複雑至極。密度の高い物語をじっくり読めて、概ね満足である。前半、捜査の経験がなく組織力もない素人が活動する部分では、三歩進んで二歩下がる式のあまりの進展の遅さに、さすがに少々退屈したけれども。
●書店に寄って本を買う。
『ガラスの橋』 Ｒ・アーサー 扶桑社ミステリー
