●『ケイティ殺人事件』 M・ギルバート 集英社 読了。
イギリス中南部の田舎町で、超一流のスター、ケイティが殺された。警察は必死の捜査を開始する。なんとまあ地味なことか。もともとこういうタイプの、足の捜査を描くミステリは好みなので面白く読めた。だが、それにしたってあまりに地味だ。
主人公格の名捜査官なんてのは登場せず、書かれているのはあくまでも警察の組織活動である。しかも目指すゴールは裁判で有罪を勝ち取ることであり、名探偵が犯人を指摘すればそれでいいってもんじゃない。クロフツなんかよりもやや犯罪実話に近い。
といっても犯罪実話のように無味乾燥ではなくて、そこはやはりミステリ小説である。登場人物の個性も様々な感情もきちんと描かれ、乏しいけれども起伏があるし事件の発展もある。そして、この真相よこの結末よ。やや唐突な気がしないでもないが、意外性は十分である。ほほう、この趣向を持ってくるか、と満足である。