●『死への祈り』 Ｌ・ブロック 二見文庫 読了。
表面的には解決したことになっている事件。その裏に潜む殺人鬼に、マット・スカダーが挑む。事件そのものは殺伐としてハードなものだが、展開には本格ミステリの匂いがちょいちょい漂う。犯人の計画もそれっぽいし、現場のわずかな矛盾から練り込まれた犯罪にたどり着くスカダーの推理もいい感じ。
ここまでは序盤と言っていい。この段階で、犯人のやったことは大体明らかになる。本書のメインの内容は、犯人の正体と居場所とを突き止めるための活動である。途中から、犯人が匿名で登場してその異常性が描かれる章が挟まるようになり、次第に犯罪サスペンスの色が濃くなってゆく。これがなかなかオーソドックスな展開で、その手の映画を観ているような分かりやすい面白さ。しかも、読者の予想を裏切るようなちょっとした捻りもあって嬉しい。
結局、五百ページ以上を最後までだれることなくさくさく読めて、全く満足である。
