累風庵閑日録

本と日常の徒然

『黒猫になった教授』 A・B・コックス 論創社

●『黒猫になった教授』 A・B・コックス 論創社 読了。

 こりゃあ面白い。明るく軽快な展開に、この先どうなるかの興味とともに流されていけばいい作品である。なにより題名になっている黒猫がいい感じ。天才的な生物学者リッジリー博士が自らの理論に基づいて、死後自分の脳を移植させた黒猫なのだ。謹厳で朴念仁だったはずの老教授が、まだ残っている猫の本能に動かされてしまう様子がやけに可笑しい。若い女性に抱き上げられて撫でられ、気持ちよさそうに喉を鳴らしたり。コメディの一要素かと思っていた、(伏字)が実は大きな伏線で、後々活きてくるのが素晴らしい。