累風庵閑日録

本と日常の徒然

『サインはヒバリ』 P・ヴェリー 論創社

●『サインはヒバリ』 P・ヴェリー 論創社 読了。

 誘拐事件を主題とするジュブナイル。日本で独自に付けた副題が「パリの少年探偵団」である。ケストナー「エーミールと探偵たち」のような陽性の探偵活動劇を想像していたら、意外にも叙情的な物語であった。孤独感を抱く少年の、揺れ動く心情が繊細に描かれる。

 その一方で激しいアクションシーンもあるし、本筋に関わるかと思っていたら途中でずっこけるネタにこれほどの分量を割くか、という奇妙な ”ずらし” もある。いい感じに予想を裏切ってくれる佳品であった。なお、作中で重要な役割を担う歌「Gentille Alouette」はYoutubeで聴ける。凄い時代になったものである。