累風庵閑日録

本と日常の徒然

『手掛かりはここにあり』 D・ホイートリー 中央公論社

●『手掛かりはここにあり』 D・ホイートリー 中央公論社 読了。

 ミステリ小説というよりは、ミステリクイズと言っていい。全体は六十ページだが、後半は関係者の写真に付随する人物調査報告なので、実質的な本文は三十ページもない。しかも状況は極めて単純化されている。前後の状況から判断して、殺人の瞬間にある部屋にいた者は犯人ではない。部屋には様々な遺留品があるので、それらを活用して誰が部屋にいたかを突き止めろ! たとえば証拠物件××は、人物写真から判断してAの服から落ちたものである。したがってAは部屋にいたことになり犯人ではない、といった調子である。

 関係者はなんと十六人もいる。そのうち被害者と犯人とを除く十四人が部屋にいたはずである。エクセルで名前を一覧にし、実物証拠や写真や本文の記述を基に誰それは部屋にいたから犯人ではない、と潰していく作業はそれなりに楽しかったが、これはやっぱりミステリクイズであるな。ともかくこれで、デニス・ホイートリーの捜査ファイル・ミステリー・シリーズ全四巻を読み終えた。