累風庵閑日録

本と日常の徒然

『虚空から現れた死』 C・ロースン 原書房

●『虚空から現れた死』 C・ロースン 原書房 読了。

 中編が二編収録されている。どちらも作風は同じようなもので、怪奇趣味と不可能興味とがぎゅうぎゅうに詰め込まれた物語が、のっけからアクセルベタ踏みのフルスピードで突っ走る。空を飛ぶコウモリ男、霊界から蘇った十五世紀の殺人鬼、透明人間。ビルの高層階からの人間消失、金庫の中の宝石盗難、警察本部での密室殺人。派手で、スピーディーで、突拍子もない。いやはやどうも、大変なものである。これだけ濃いと胸焼けしてしまう。一編読んで中断して、間に別の本を挟んで口直しをしないと通読できなかった。

 解決は(伏字)だったりして、ずっこけ気味。そりゃあ、そういう落とし所にするしかないであろう。まるで乱歩の少年探偵団シリーズを読んでいるようだ。ただ、第二話「見えない死」の犯人設定にはちょっと感心したし、付随する(伏字)ネタも気に入った。