累風庵閑日録

本と日常の徒然

『鉄道無常』 酒井順子 角川書店

●『鉄道無常』 酒井順子 角川書店 読了。

 内容は副題の、「内田百閒と宮脇俊三を読む」の通りである。ふたりの著作の内容をそれぞれの生涯の時系列に合わせて並べて、ときには単独で、ときには両者を比較しながら読んでゆく。

 著者はそこに、変化を嫌い失われた物を想う百閒と、変化を受け入れ人生の儚さを想う宮脇の姿とを読み取る。あるいは、子供の視線を保ったままの百閒と、否応なしに大人の視線を身に着けた宮脇の姿とを読み取る。

 触媒としてとてもいい本であった。阿房列車宮脇俊三の諸作を再読したくなるし、自分でどこかに行きたい気持ちがもりもりと湧いてくる。鉄道が通っている場所ならほぼ日本中行った私自身の過去の記憶が甦ってくる。

●今月の総括。
買った本:五冊
読んだ本:十二冊
 月初の計画以上に順調に読めている。