●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第二十二回として、第五巻から長編「滅びた世界」を読んだ。訳者は大佛次郎である。
四十年ほど昔、子供向けの訳で読んで以来である。当然内容はまるで覚えていないので初読同然。これが予想以上に面白かった。
序盤は、チャレンジャー教授が語り手のマローンに翼竜の骨を見せる辺りでぐっと気分が盛り上がる。現場に到着してからの展開も起伏に富んで飽きさせない。大群落を成す翼竜の描写は不気味だし、こちらの臭跡をたどってじわじわと迫ってくる肉食巨竜のスリルもちょっとしたもの。
自然界に人間視点の善悪を持ち込み、自分達が正しいと信じたら平然と殺戮を重ねるなんて展開は、ドイルの無邪気さというよりはむしろ、ある程度普遍的な人間の性質が描かれていると読みたい。結末のずっこけ感からしても、無邪気で善良なだけの作品ではないだろう。
●朝から病院に出かけ、新型肺炎ワクチンの三回目を接種してきた。用心して今日は休み、部屋にこもって自分の体の状態を観察しながらおとなしく過ごす。現状では副反応は極軽微で、注射した腕にちょっと違和感があるくらい。世間では翌日に発熱する例があるというから、まだ油断はできない。