累風庵閑日録

本と日常の徒然

『十二の奇妙な物語』 サッパー 論創社

●『十二の奇妙な物語』 サッパー 論創社 読了。

 全体として、なんと素朴な作品集であることか。扱われているテーマは、愛するが故の嘘、義務と愛との相克、自己犠牲、裏切りと復讐、等々。外連味もなく、全体をひっくり返すような捻りもなく、それらのテーマが直球で迫ってくる。実に分かりやすい。

 分かりやすいというのは、言っちゃあ悪いが薄味で物足りないということでもある。申し訳ないが、途中で退屈してしまった。そんななかで、相対的にミステリ味の濃い作品はまあ面白く読めた。気に入った作品を挙げておくと、観察と推理と機知の物語「作家の話 アップルドアの花園」、ストレートな殺人ミステリ「ウイスキーのグラス」、アフリカ西部の僻地を舞台にしたハードボイルドか冒険小説かという「酔えない男」といったところである。