●『フランケンシュタインのライヴァルたち』 M・パリー編 ハヤカワ文庫 読了。
人造人間テーマの怪奇小説アンソロジーである。論創ミステリ叢書のような個人短編集を何冊も読んでいると、久しぶりに読むテーマアンソロジーがとても新鮮で面白い。編者によって精選された作品を集めただけあって、佳作、秀作が揃っているのが、個人短編集には欠けがちな利点である。当然作品毎に作者も傾向も違うので、読んでいて飽きないのも利点と言える。
収録作中のベストは、フリッツ・ライバー「死んでいる男」であった。人類に対する科学の貢献と個人の感情との相克、ってな物語からの急展開。その落差がお見事。ドナルド・F・グラット「カルンシュタイン博士の創造物」は、ちょっとした捻りが効いている。
C・A・スミス「イルルニュの巨人」は、中世ヨーロッパのような舞台と陰鬱な描写とのおかげで、なんとも妖しい雰囲気が醸し出されていて上々。そっち方面はよく知らないけれども、いわゆるダークファンタジーとはこういうものだろうか。
不気味さが際立っているのが、ジェローム・K・ジェローム「ダンシング・パートナー」、アンブローズ・ビアス「モクスンの傑作」、D・スコット=モンクリーフ「ソウルノウク伯爵のロボット」の三作。シリーズ前巻『ドラキュラのライヴァルたち』の吸血鬼のような、異界からやってくるモンスターとはちょいと質が違う。描かれているのは、同じ世界に属していながら制御も意思疎通も叶わぬ存在の不気味さである。