●『魔の配剤』 O・クック ソノラマ文庫 読了。
巻末解説によると、ハーバート・ヴァン・サールが編纂した二十二編収録の怪奇小説アンソロジーから十二編を選んだものだそうで。ついでに、序文では「拷問にまつわる話、常軌を逸するサディズムの話、残酷きわまる物語など」とあって、そういう傾向の作品を中心に編まれているようだ。
個人的な好みからすれば、打率はさほど高くない。その中で気に入った作品は以下のようなところ。アンソニー・ヴァーコウ「ペストの夢」とフレヴィア・リチャードスン「黄色いドアの向こうで」は、怪談らしい怪談で構成の素朴さが楽しい。ハミルトン・マカリスター「神の使途」は異様なまでの不気味さ。
ミュリエル・スパーク「ポートベロ通り」はやや異色で、人生の長さを思わせて胸に染みるような良作。シーバリー・クイン「恐怖の館」は、オカルト探偵ジュール・ド・グランダンシリーズ。グロテスクで悪趣味で極彩色で、(伏字)テーマの秀作。このシリーズは創元推理文庫や論創社を買ってあるので、いずれは読みたい。