累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ドイル全集 第六巻』 C・ドイル 改造社

●「改造社の『ドイル全集』を読む」プロジェクトの第三十一回。今回は第六巻から、「『北極星』號の船長」を表題作とする短編集パートを読む。「J・ハバカツク・ヂエフスンの話」は、かの有名なメアリー・セレスト号事件の真相はこうだ、という内容。ちょいちょい伏線を仕込んだミステリ仕立てになっている。「魂の入換へ」は、落語めいた馬鹿馬鹿しさが楽しいホラ咄。「小さい四角の箱」は、結末も含めてよく整ったサスペンスの佳作。

「シプリアン・オウヴアベツク・ウエルズ」はとぼけた味わいの好編。作家志望の青年がまどろんでいると、夢か現か、過去の文豪達が何人も目の前に現れた。彼らは青年に創作のインスピレーションを与えようと、リレー形式で物語を組み立て始めた。そこで語られる作中作の主人公の名前が題名になっている。「ジヨン・バリントン・カウルズ」は、一転して不気味な怪奇小説。読み手の想像を刺激する、安定した語り口がちょっとしたもの。

●これで第六巻を読み終えた。来年から第七巻を読むことにする。全八巻読破も見えてきた。