累風庵閑日録

本と日常の徒然

『善意の代償』 B・コッブ 論創社

●『善意の代償』 B・コッブ 論創社 読了。

 この本の魅力は、登場人物にある。孤独な老人を無料で住まわせる慈善アパートの住人達がなんとも奇矯で、読んでる間は面白い。特に、話に切れ目がなく途中で尻切れトンボになる女主人マンローと、善意から食後の洗い物を申し出ては皿やカップを割りまくるラムズボトムとが出色であった。

 だが肝心の、ミステリを読んだ満足感は高くない。ミステリに備わっていて欲しい要素、すなわち外連味、意外性の演出、ロジックの妙味といったものがちと心細い。二百ページ少々では、いろいろ盛り込むのにページが足りないのかもしれない。

 ……というのはどうも釈然としないのだが。もしもキモとなる部分を読み落としているのであれば悔しいので、他のお方の感想を読みたい。